中途採用の成功事例 ~中小企業に転職した優秀な人達~
中途採用の成功事例
私の周囲にも、大手企業から中小企業へ転職した、優秀な人間が数人います。“30代で年収1,000万円に届く”という超優良企業からの転職者もいます。勿論、転職により年収は確実に落ちます。それにも関わらず転職しました。
注目すべきは、彼らは決して組織内の競争に敗れたわけでもなく、人間関係がうまくいかなかったわけではありません。むしろ、将来を期待されて、海外に駐在したり、大きな仕事を任されたりしていました。
では何故大手企業から中小企業へ転職したのでしょう?今回は、中小企業に転職した方の声を掲載致します。今回は”縁故採用”の事例ですが、その範疇で中途採用のヒントにされててみて下さい。
転職理由1) 経営陣からの熱心な誘い
一番大きいのは経営陣からの熱烈なラブコールです。ここが”とっかかり”です。そこで、経営者の人間性(経営理念やビジョン)、社風に惹かれた、というパターン。ここは経営者が如何にビジョンを作り、熱意を持って語るかでしょう(勿論、伝え方のテクニックは色々あります)。
海外の超一流サッカー選手が「このクラブのビジョンに感銘を受けた」と言って、移籍をすることが多々あります。優秀な人材には、夢を語り、そしてそれを叶える力になってほしいことを訴える必要があります。
転職理由2) 仕事が面白い
中小企業に転職した人がよく言うのは「こっちの方が仕事は面白い」です。では、何が面白いのかというと、まずは「裁量が大きい」ことです。
大企業は、組織体制が良くも悪くもしっかり作られているため、何事を始めるにも、上司の許可が必要です。いわゆる、稟議決裁というものです。これは、「丁寧な」意思決定がなされるためのものですが、その反面、時間がかかるし、面倒なものです。また、担当者は本人でも、最終的な責任者は決裁者になります。ですから、一度決まったものを進めるにしても、いちいち決裁者にお伺いを立てねばなりません。また、責任が薄まる、ということで、担当者本人の緊張感が薄まることもあります。
一方、中小企業であれば、多くの場合、「自分で決めて」「全部任せるわ」と言われます。転職してすぐに役職が付くケースも多いです。「本部長」「経営企画室長」などの名前がつき、裁量権が委ねられます。
最初は「え?そんなに任せくれて大丈夫なの?」と心配になるほどだそうです。しかし、自分で決めて、自分で進める、自分で責任を取る、ということは、一定レベルのビジネスマンにおいては、それが仕事の醍醐味になってくるのです。「規模は小さいけど、色々自分でできるから今の方が楽しいわ~」ということをよく言ってます。顔が輝いてます。
尚、中小企業の場合は、仕事を進める際に、営業、マーケティング、契約、回収など、すべて自分で行う必要があります。大手企業であれば、関係組織がしっかりしているため、一部だけでよいのですが、中小企業はそうもいきません。専門性よりも多能工、営業マンではなくビジネスマンあるいは経営者でなければならないのです(この点もアピールポイントの一つです)。
また、「自分が会社を変えられる(手づかみ感)」ことも、仕事が面白い理由の一つです。大手企業であれば、何千、何万人と社員がいて、さまざまな部署があって、1社員が会社に与える影響は知れています(不祥事は別として)。一方、中小企業では、1人当たりの組織影響が大きい。すなわち、己の行動一つで会社を成長させ得るということです。
今まで、大型船の何百人いる内の1乗組員だったのが、海賊船やクルーザーのかじ取りを任されるのですから、そのスリリングさたるや。
転職理由3 大手に劣らない待遇も
「中小企業」といっても、知られていないだけで、大手企業にも劣らない待遇がある会社も沢山あります。30代で年収600万円~800万円、あるいはそれ以上に届く会社もあります。特に、ニッチトップとして、特定の市場で勝ちまくっている企業です。財務体質が良く、そして、待遇も悪くありません。シャープがあのようになる世の中ですので、優秀な方ほど、見てくれではなく、本質を見せた方が良いと思います。
また、金銭面とは別ですが、大手よりも「有能感」が感じられることも、求職者のメリットです。大企業であれば、大人数の中に埋もれてしまいますし、出世も「運」次第なところが多い。一方、中小企業は、血縁関係を除き、ある意味大手より実力主義。どんどん出世し、能力の発揮を求められ、目立った存在になれますし、しかも周りに高学歴エリートはおらず、相対的エリートになります。エリートとして扱ってくれるから、居心地もいいし、面白い仕事もくる。これは結構大きいポイントです。
これらのことは、採用の際に効果的なPRポイントになります。
転職後の注意点) 不満は「経営陣・社員のレベル」
一方、不満に思うのは、「経営陣や社員のレベル」です。やはり、どうしても中小企業になると、大企業の社員よりレベルが(平均点では)落ちます。特に、ワンマンオーナー企業においては、オーナーが全て決めるので、社員の方は基本イエスマン。意見を求めても出てこない、何も決めない、危機感・責任感がない、全然動いてくれない、ということで不満を覚えることが多いようです。そのため、経営者はここを丁寧にフォローしなければなりません。
しかし、これについては、逆に中途採用者が会社の「悪い癖」を治すキッカケになるかもしれませんので、中途採用者のモチベーションを下げないようなフォローが必要です。
また、今の経営者が優秀で魅力的でも、永遠に生きられるわけではありません。跡を継いだ経営陣がしっかりしていなければ、優秀な方ほど不満は大きなものとなります。
そのため、優秀な人材が定着するためにも、社員教育や承継が大事になってきます。
尚、今回は「縁故」での採用になりますが、縁故ではなく通常の募集・採用方法についても、今後書いていきます。