中小企業に人事評価は必要か?
中小企業に人事評価は必要か?
上手に機能している・してないは別にして、多くの企業で「人事評価制度」が導入されています。
では、中小企業において、この「人事評価制度」が必要なのか?果たして合うのか?これについては「合う」場合と、「合わない」場合があると思います。
うまく使えばものすごく良い制度ですし、うまく使えなければ意味のない制度になります。
1 )人事評価には2つの側面がある
まず、人事評価制度には、2つの側面があります。一つは「査定」で、もう一つは「人材育成」です。
もし、「査定」のための人事評価制度であれば、中小企業にはあまり「合わない」、積極的に取り入れる必要はないかと思います。
何故なら、多くの中小企業において、株主=経営者の、オーナー企業が多いため、経営者や経営陣が、”鉛筆なめなめ”しながら昇給やボーナスを決めており、それはそれで一定の合理性があるからです。
オーナー経営者は絶対的権力を持つ、いわば「神」です(法律の範囲内において)。社員からしたら「オーナーに言われたら納得せざるを得ない」、となります。大企業であれば、オーナーや経営者ではなく、部長や課長が評価するので、「納得いかない」ということもあるかもしれませんが、オーナーに言われれば心理的にも、制度的にも中々逆らえません。また、中小企業であれば、経営陣が全社員の状況を把握をすることは可能です。
そのため、あえて「人事評価制度」という堅苦しそうな制度を導入して、それを基に査定しては、評価目線を整えるのに労力が必要だし、色々ツッコミどころも出てくる可能性があります。結局オーナーの意向/威光でどうこうするのであれば、制度など作る必要ありません。なので、あまり「合わない」のです。
2 )『人材育成』の観点から使う
一方、「人材育成」という使い方であれば、中小企業には有効なツールになりえます。中小企業に「合う」と言えます。
どのように使うかと言うと、社員の育成にあたって、上司や先輩の言ってること、求めることがバラバラにならないような、「一つの尺度=評価基準」を作り、それに基づいて指導や育成をしてもらうようにします。
例えば、「責任感」や「チームワーク」、「リーダーシップ」、「改善意識」「規律・時間順守」など、社内のどの職場でも求められる評価項目を作り、「この職位、この年次なら、これらの項目に関して、このくらいできないといけないんだよ」と、指導するのです。
例えば、こんなケースで使えます。
ある中小企業さんなんかでは、A部署の社員はしっかりしてるのに、B部署の社員はダメだ、という不満の声が聞こえてきました。
確認してみると、確かに、B部署の上司の指導は甘い。期限に遅れる、段取りが甘い、といったことがあっても、B部署の上司や先輩は「それくらいいいよ」「大丈夫、しっかりやってるよ」と指導も改善もしてません。
これが育成のバラつきです。これをなくすために、人事評価を使います。
例えば、「規律」という評価要素を設けて、「期限厳守」「計画的な業務遂行」ができているかを上司が定期的にチェックします。できていなければ、そこだけ集中指導してもらいます。これにより、どこをどう指導すれば良いか見当がつきます。
特に、「指導」に自信がない上司については、どこを指導すれば良いのか、部下に対して、何をどこまで求めれば良いのか、分かっていないケースが多いです。上司をサポートする意味でもこのような評価制度を導入するのです。
また、「うちの業界も、今後は受注営業ではなくて、マーケティング営業や提案力が必要だな」と思ったら、「企画力・マーケティング力」という評価項目を作り、そこをチェック・指導していくというパターンもあります。
というように、全社共通の「社員のあるべき姿」=「評価基準」を提示して、上司のセンスや価値観を基にではなく、「評価基準」を基に指導・育成してもらうようにします。そうすると、全社の育成のバラつきが少なくなります。
勿論、事務の人と現場の人では、やってる仕事は異なりますが、「コミュニケーション(情報共有、報連相)」、「責任(期限順守、ミスがない)」、「改善(業務改善、コスト削減)」等の、項目はどの職場でも共通しているので、まずはこういったものを評価基準にするとよいと思います。
3)『査定』に使わず、『コミュニケーションツール』とする
因みに、この場合、評価を「査定」に使わなくても良いと思います。あくまで、育成のために使うことで十分だと思います。あるいは、全社員ではなくて、若手社員にのみ使う等、そのあたりも柔軟に対応すればよいと思います。
どこの企業でもよくあることですが、上司・部下の年齢が離れすぎて、指導しにくい面もあると思います。その際にも、人事評価制度を一つのコミュニケーションツールにするのも一つではないでしょうか。
因みに、育成のための人事評価制度ですが、どのような項目で評価すればよいのか、少しヒントをお伝えします。
評価制度構築においては、大きく2方向あります
「優秀な社員にヒアリングをして、その行動から評価項目に落とし込む」
「これからの経営環境をふまえ、未来視点で評価項目を作りこむ」
という2つのやり方があります。
ここは技術が必要な部分ですが、これをうまく作れば、会社が良い方向に進むきっかけになり得ます。「是非作ってみたい」という企業様はご相談下さい。